原作者 エドワード・ゴーリー(1925〜2000)

ゴーリーはいまは亡きアメリカの絵本作家。

イラストなど商業デザイナーとして活躍するかたわら、演劇の分野でも舞台美術などを数々てがけた。
細かく描き込まれたモノクロームの線画とナンセンスにしてシニカルな物語で構成されたゴーリーの絵本。
その不可思議な作品世界は、今日まで熱狂的なファンを生んできた。


 エドワード・ゴーリーの絵本たち

 
エドワード・ゴーリー作の書籍は、2000年「ギャシュリークラムのちびっ子たち」で初めて邦訳が出版されました。ゴーリーの亡くなった年のことでした。
ここでは、現在出版されているもののなかで、エドワード・ゴーリー作の絵本として刊行されているものを紹介します(絵だけゴーリーが描いた作品、複数の作家の短編集になっている本などは除いています)。
すべて河出書房新社から出版され、文のあるものは柴田元幸さんの訳です。
演出家(石川哲次or友松正人)のショート読書感想文も掲載していますので、ご覧になってくださいね!
(作品紹介文及び写真は、河出書房新社HPより引用しています) 
 
ギャシュリークラムのちびっ子たち



大人のための絵本作家として世界的なカルト・アーティストであるエドワード・ゴーリー。子どもたちが恐ろしい運命に出会うさまを、アルファベットの走馬灯にのせて描いた代表作。
受賞 日本図書館協会選定図書


最初は死因の多様さに目がいきました。いつの間にか、「死」に目がいきました。今は「生」について考えています。(友松)
うろんな客


カギ鼻あたまのヘンな生き物がやってきたのは、ヴィクトリア朝の館。とある一家の生活の中に、突然入り込んできて、そして、それから――。ゴーリー独自の文章が稀代の翻訳家によって短歌に!

この愛すべき生き物、勝手に「うろんちゃん」と呼んでいます。ラブリー!(石川)
優雅に叱責する自転車



それは火曜日より後で、水曜日より前のこと。一台の自転車が通りかかりエンブリーとユーバートは旅に出た。みょうちくりんな冒険の後に見たものは――? さらにシュールな物語が展開される。

「バイセクル the bicycle」の核になっている作品です。自転車という「もの」を演じて表現する、まさに人形劇にうってつけの世界です。(石川)

不幸な子供




おぞましい小動物があちこちで蠢く、掛け値なしの悲劇。トレードマークの微細な線画で、圧倒的な背景を描き込み一人の少女の不幸を悪趣味すれすれまでに描いた傑作!
受賞 全国学校図書館協議会選定図書 日本図書館協会選定図書

これで終わり?終わりだ。うん、やってくれた。説明過多や甘口が表面的な作品が多いけど、この本に人気があることは嬉しいことです。(友松)

蒼い時



「生きることじゃなくて、生きてもらうことが大事なんだ」旅嫌いのゴーリーが唯一遠出したときの思い出を、2匹の犬(もどき?)に託して語る摩訶不思議な物語。珍しく可愛いお話です。
受賞 日本図書館協会選定図書

この本は、読み返しています。空想力が目をさましお芝居を作りたくなります。じぶんがゴーリー作品を好きなのは、そんな刺激を受けるからなのかも知れません。(友松)

華々しき鼻血




はてしなく編まれるマフラーや、だらしなく供されたプディングを絶妙の副詞で捉えたアルファベット・ブック。副詞にかつてない最大級の栄光を与えたゴーリーらしい言語感覚が光る大傑作。
受賞 朝日、毎日

ねちねちとよくあつてきにならないよう気を付けています。柴田さんの訳、最高です。(石川)


敬虔な幼子



優しい善良なヘンリー・クランプ坊やが、神の御許に昇ってしまうまでをゴーリー独特のタッチで描いた崇高で謎めいた物語。

これってアイロニーですよね。アンチテーゼですよね。大好きです。(友松)

ウエスト・ウイング



どこの西棟(ウエスト・ウィング)なのか? いったい何が描かれているのか? すべてが見るものの想像力にゆだねられてしまう、途方もなく怖い作品。

24ページの物の中身が気になっています。(石川)

雑多なアルファベット




「赤子泣くとも墨汁飲むな」「昆布選るなら寄りあって」など、ヴィクトリア朝の教訓をパロディにしたゴーリーならではのアルファベット・ブック。

小窓から覗く切り取られた世界、大好きです。けこみ人形劇の(劇場の額縁に比べて)とても小さな空間に広がる無限の世界を、私も表現したいと日々感じています。(石川)

キャッテゴーリー


とぼけた猫がなんとも愛らしい、ゴーリーならではの不思議な猫たちが、1から50まで、さまざまな数字書体(漢字もあるのだ!)とともに登場する、奇妙な絵本!

ある1匹のネコ(まずこれが合っているのか!?)の人生を綴ったエピソード。23に胸がグッときます。何があったのだろう・・・。(石川)

弦のないハープ




ゴーリーを彷彿させる(?)作家イアブラス氏の未完の「新作」をめぐるものがたり。ゴーリーのすべてのエッセンスがつまった素晴らしいデビュー作、ついに邦訳登場!

共感しました。これはみんなが共感する本だと思いました。賛同は得られていません。夜中に書いたラブレターが目をさましたらビリビリにして燃やしてしまいたくなる、誰にでもある気持ちを描いている、と思います。賛同は得られていません。(友松)

まったき動物園




「エピトウィー事あるごとに痙攣し挙句の果てに哀ればらばら」A〜Zまで26の不思議な生き物たちが集まった、ゴーリー版「幻獣事典」。

動物たちは誰かが見ていてもいなくても、自分たちのやり方を変えない。公開の孤独、素敵です。嫌な動物がいても、自然の摂理は我々の感情よりはるかに偉大です。(友松)

題のない本




定点観測のようなカメラワークでとらえた画面の中に、次々と登場する不思議な生き物たち。激しくシュールなゴーリーの魅惑の世界が展開する大傑作! シリーズ第13冊目。

虫嫌いの私としては、主役(?)の子どもが無敵に見えます!(石川)

おぞましい二人



実話を元にした、子供を誘拐して殺してしまう「忌まわしいカップル」の物語。ゴーリー最大の問題作!? 人生はかくも過酷なものである、としみじみする異色の一冊。

淡々とした表現は、ゴーリーの絵と文、このスタイルならでは。意識的な表現から浮かび上がるものがあります。人形劇留学していた篠崎(2010年公演出演者)にアメリカで原書を買って来てもらいました。後から邦訳が出て喜びました。(友松)








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